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えっ、父親に800万円の借金・・・
私の父親は会社員です。
私と妹を大学まで卒業させてくれ、経済的な苦労をさせられた覚えはありません。
一般的な、ごく普通の家庭だったと思います。
私は大学を卒業後、IT関連の会社に就職し、不景気ながらも家庭を持って生活できています。
妹は結婚の意思はなく、仕事と趣味に生甲斐を持っているようです。
本当にごく普通の家族なのです。
そんなある日、母親から深刻な声で電話がありました。
「お父さんに借金があったんだよ・・」力なく言う母親は、今にも倒れそうな雰囲気でした。
私は妹にも連絡をして、翌週の土曜日に実家へ帰りました。
父親の借金は800万円でした。
借金で800万円って何に使ったのだろう?という疑問が湧きました。
私は住宅ローンはありますが、普通に生活をしていれば借金をすることなどありません。
ネットショッピングでカード決済を利用したりすることはあっても、“借金”というものはありませんでした。
家族に内緒だった借金の使い道はとは?
威厳のある父親だったので、子どもの立場の私が父親を問い質すのは非常に気が重いことでした。
しかし長男として、私が聞くしかありませんでした。
話を聞いてみると、実は父は、家族に隠れて損保保険の代理店を経営していたらしく、いいときはそれなりの収入を得ていたようですが、不景気だということもあって徐々に経営状態が悪化していったようです。
そんなことを知らなかった母親は泣き出し、私も妹も呆然としてしまいました。
結果的に代理店は閉め、借金だけが残ったそうです。
父親はあと2年で定年退職をします。
800万円の借金など、返していけるわけがないのです。
必死に勧めた自己破産
とにかく私は債務整理を専門としている弁護士を探して、電話をしました。
費用は30万円程度かかりますが、800万円の借金から解放されるのであれば30万くらいはなんとでもなります。
私は父親を連れて弁護士事務所へ行きました。
財産らしい財産は、2LDKの中古マンションだけです。
仮にマンションを取られたとしても、私の家で同居をすることは妻も了承してくれていました。
年齢的にも借金の返済で苦労するより、少しの財産を手放して不安のない生活をしてほしいと考えました。
それに、もしこの借金を残して死なれでもしたら、私と妹が借金までも相続してしまうことになるのです。
もう、自己破産しない理由など思いつきませんでした。
ところが、私と弁護士の先生の間では「自己破産がベスト」「自己破産するしかない」というところまで話しをしているのに、父親が最後の最後まで渋っていました。
「借りるときは頭を下げてお願いして貸してもらったのに、それを返さないで踏み倒すのは人として道に外れる・・」
父親の言っていることは尤もでしたが、どこから返済するお金が出てくるのか。
私や妹が払っていくには、金額が大きすぎました。
そして父親を説得して、自己破産をすることになりました。
手続きには半年くらいかかりました。
弁護士の先生が全てやってくださるので差ほど面倒なことはありませんでしたが、それでも気持ちは落ち着きませんでした。
びっくりしたのは、自己破産の手続き中は返済をしなくても良いというシステムです。
これは有り難かったですね。
私が依頼をした弁護士の先生が敏腕だったこともあると思うのですが、私や父親が面倒事に煩わされるようなことはほとんどありませんでした。
失ったものと家族の絆
晩年、実家を売って購入した中古マンションは手放すことになってしまいました。
貯金はいくらもありませんでしたが99万円を残して回収され、生命保険も解約して払う戻し金は回収の対象となっていました。
それでも暮らしていくために必要なものは手元に残ったので、私の家に引き取って、狭いながらもなんとか生活はできています。
家族の絆を失わずに済んだことは、本当に良かったと思っています。
父親がもうすぐ定年を迎える会社にもバレることはありませんでした。
そして、母親に笑顔が戻ったことで、自己破産をさせたことを後悔せずに済みそうです。
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