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民事調停の一種である特定調停
裁判所に申立てを行う必要がある特定調停は、比較的手続きが簡単で弁済方法などの規定も特に厳しく設けられているということがありません。
それは債務者と債権者の交渉次第で解決することができる『調停』という形式だからです。
特定調停法ができたのは平成12年のことでした。
実はまだまだ新しい制度なのです。
それまでは、多重債務問題の解決は民事調停で図ってきました。
しかし民事調停ではいくつかやりにくい点があり、改善策として設けられたのが特定調停の制度なのです。
言わば、特定調停は民事調停の特例なのです。
『民事調停』より『民事訴訟』の方が耳に馴染みがあるのではないでしょうか。
『民事訴訟』では、裁判所で争ってどちらが正しいか決着をつけますが、『民事調停』では調停委員主導で、申立人と相手方の双方の交渉によって円満な和解をすることが目的となっています。
債務整理だけでなく、交通事故の損害賠償請求など、身近な揉め事に利用されます。
民事調停の特例で制定された特定調停
民事調停では双方の歩み寄りで円満解決することを目的としていましたが、多重債務のトラブルに関してはなかなか円満な解決を図ることができませんでした。
そこで、特定調停が民事調停の特例として制定されたのです。
『支払不能となる恐れのある債務者の経済的再生に資するため、特定債務者の金銭債務に関する利害関係の調整』が目的となっています。
ですから、基本的には従来の民事調停法同様に『債務弁済協定調停』に則った運用となっています。
『債務弁済協定調停』は、債権者と債務者が弁済方法について合意する調停制度で、利息制限法の上限金利に基づいた引き直し計算をして減額された借金を3年間(或いは5年間)で支払うこととなっていました。
特定調停でも、同様のやり方を引き継いでいます。
民事調停と特定調停の違い
民事調停の特例として特定調停が制定された際、修正された項目がいくつかあります。
特定調停は、調停委員が債権者と債務者の間に入って交渉をします。
弁護士に全てをお願いする任意整理や個人再生に比べて、費用が抑えられます。
計画通りの債務履行とならなかった場合は、債権者が債務者の給料や財産を差し押さえる可能性があります。
民事調停では、裁判所が民事執行手続の停止を命じることができるのは、『特定調停の成立を不能、若しくは著しく困難にするおそれのある時』に限って許可されていました。
さらに、『担保の提出が必要』『裁判所作成の債務名義に対する強制執行は執行停止の対象とならない』という部分も、債務者には厳しいものとなっていました。
また、民事調停では専門分野ではない人が調停委員に選任されることもあり、専門知識や経験が豊富な調停委員に当たった場合と当たらなかった場合の差が大きくありました。
そういったことが、債務者に不公平感を与え、不満の原因にもなっていたのです。
さらに、債権者である貸付業者の関係書類の提出を促すことも困難でした。
提出しなくても罰則がないため、書類の提出を義務化できませんでした。
しかし特定調停では、そういった問題点を改善することができています。
特定調停では、『特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがある時』という前置きをして、『裁判所が民事執行手続の停止を命じることができる』としました。
また、『無担保での停止も可能』とし、『裁判所が作成した債務名義に基づく強制執行も執行停止の対象』となったのです。
さらに特定調停では、法律や金融、資産評価など事案ごとに専門知識や経験豊富な調停委員を指定できるようになったのです。
ほかにも、債権者と債務者双方の責務を明らかにし、裁判所からの書類や物件の提出に応じなかった場合『10万円以下の過料に処す』という罰則が設けられました。
これにより、債権者である貸付業者からの書類提出もスムーズになったのです。
民事調停と特定調停の違いは、民事調停を債務整理用に改善した点であるということですね。
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